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おしげ
お繁
山本 周五郎
Read お繁 (おしげ) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,857 characters · 14 screens
「そうだとも」
とわたしが答える、「早く行って妹をみてやるがいい、本当に川獺にでも食べられたらかわいそうだ」
「ふん、そんな嘘を云っておんだらを騙す気なら大違えだぞ、おかしくもねえ」
「…………」
「ああつまんねえ」
吐き出すように云って、お繁は惰るそうに立上った。
わたしは黙っていた。お繁はぺっと唾を吐いて河のほうへ去って行った。関門のところを右へ、それから堤へむかったと思うと、哀調のある声でうたいだした。
「向うの山に鳴く鳥は、ちゅうちゅう鳥かみい鳥か、源三郎の土産、何をかにをもらって、金ざしもらって……」
沼地の蘆がざわめいて二羽の鵜がけたたましく飛び立った、川獺にでも追われたのであろう、高く高く舞上るとそのまま東のほうへ飛去ってしまった。――お繁の唄はもう聞えなくなった、わたしは煙草に火をつけ、餌をつけ代えるために釣棹をあげた。