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だいこん
だいこん
久生 十蘭
Read だいこん by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 153,732 characters · 303 screens
宮殿の礼式やサロンの作法はもとより、ロンドンの四季や行事にくわしい。特製の“Little Londoner”といったところである。とりわけ熱い紅茶を音をたてずに飲むことがお上手で、先生もそれがお得意らしく、何杯となくおかわりをして奥儀をお示しになる。
ところでたまたま日本の緑茶が出ると先生はえらい音をたててズーズーと啜りこむ。安心してついうっかりやってしまわれるらしい。私たちはそんなことを荒だてる気はないから、なにもいわずにそっとしておく。しかし、だいこんは斟酌しない。ピアノの椅子に腰をかけて足をブラブラさせながら、怒ったような眼つきで先生の横顔を睨みつけていたが、とつぜん、
「ズーズー……えらい音だな」
とやりだす。珠子さんがあわてて眼で叱る。およしなさいってば。
だいこんは負けていない。容赦なくコスト氏に喰ってかかる。
「ふうん、日本のお茶なら音をたてて飲んでもいいんですね、コスト先生」
コスト氏は不意打ちを喰って眼を白黒にする。スースーと冷たい風を吸いこんで火傷をした舌を冷しながら立てなおす。この餓鬼め。
「さよう日本のお茶ぐらいならば、そう気をつかわなくとも、はあ」