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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

Read わか紫 (わかむらさき) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 37,708 characters · 75 screens

Aozora Bunko

胸に当てたる白布には折目正しき角はあれど、さばいた髪のすらすらと、霜枯すすきの葉よりも柔順。

「よう、妙な扮装だぜ。」と雲おじい、更めてつくづく視める。

「だから神巫見たようだというのよ。」

「己らまた、柱暦の絵に描いた、倭武尊様かと思った奴さ。」

悠々として、掻いはだけた、膝の皿に牛蒡の肱で、憎躰な頬杖なり。

雲おじい、蒼痣かと、刺青の透いて見える、毛だらけの脇腹を、蜜柑の汁の黄みついた五本の指で無意味に掻き、

「時に姉え、お前、どこだ。」

「熱海なの。」

「は、御花主場だ、あんまり見かけねえ。」

「車夫さんは小田原?」

と、めりはりが判然して、人見知りはせず、愛々しい。

伝九頷き、

「図星々々。」

「その図星だ、一番きゅうと極めてえもんだ。」

「まず、じらす内が楽みよ。」と蜜柑の皮を掴んでは、ほたほたと地板へ打附ける。

お鶴は何の気もつかず、

「私は海岸なの、おじさんたちは、お客様を送っちゃ町の旅籠の方へばかり行くんでしょう、だから知らないんだわ。」

雲おじい頷いて、

「成程、可わえ、それじゃ水心ありの方だの、こう、姉え、そしてお前どこへ行く。」

「小田原。」

「何が小田原、」