Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
みうらろうじんむかしばなし
三浦老人昔話
岡本 綺堂
Read 三浦老人昔話 (みうらろうじんむかしばなし) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 113,637 characters · 224 screens
」
挨拶をして表へ出る頃には、杉の生垣がもう真白に塗られていた。わたしは人車を待たせて置かなかったのを悔んだ。それでも洋傘を持って来たのを仕合わせに、風まじりの雪のなかを停車場の方へ一足ぬきに辿って行った。その途中は随分寒かった。
春の雪――その白い影をみるたびに、わたしは三浦老人訪問の第一日を思い出すのである。
鎧櫃の血
一
その頃、わたしは忙しい仕事を持っていたので、兎かくにどこへも御無沙汰勝であった。半七老人にも三浦老人にもしばらく逢う機会がなかった。半七老人はもうお馴染でもあり、わたしの商売も知っているのであるから、ちっとぐらい無沙汰をしても格別に厭な顔もされまいと、内々多寡をくゝっているのであるが、三浦老人の方はまだ馴染のうすい人で、双方の気心もほんとうに知れていないのであるから、たった一度顔出しをしたぎりで鼬の道をきめては悪い。そう思いながらも矢はり半日の暇も惜しまれる身のうえで、今日こそはという都合のいゝ日が見付からなかった。
その年の春はかなりに余寒が強くて、二月から三月にかけても天からたび/\白いものを降らせた。わたしは軽い風邪をひいて二日ほど寝たこともあった。