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くたにやき
九谷焼
中谷 宇吉郎
Read 九谷焼 (くたにやき) by 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 6,535 characters · 13 screens
震災で失ったものの中で、この頃になって、惜しいと思い出したものは九谷焼である。父が心懸けて集めたもので、古い時代のいわゆる古九谷と呼ばれている高価な品ではないのだが、現今大量生産でどんどん造り出している今の九谷焼と、古い時代の「真正の九谷焼」との連絡を見るために、丁度都合のよい標本であったことと、自分には父を偲ぶよすがとなる品であったので、時がたつにつれてしみじみ惜しくなって来る。
加賀の人でも、この頃では余り知っている人が少い位だから、東京の人などには、「真正の九谷焼」は余り知られていないようだ。一皿数千円もするというような骨董としての九谷と、夜店で売っている九谷とが、今の東京の人に知られているので、丁度その連絡をなし、現今なお古い神聖な九谷焼を護っている少数の人々のことは殆ど知られていない。
沿革などというと如何にも骨董家めくので、極簡単に書くと、日本で芸術品としての陶器が出来出した頃、伊万里焼を倣って後藤才次郎という人が、九谷村で適当な粘土を得て造り出したのが九谷焼の起りで、前田家治卿がパトロンとなってあれだけに発達したものなのである。その頃は、今のように焦燥の生活をしなくてもよかったので、数代も名工の後裔が、殿様の庇護の下で研究を続けて、一つのかまを完成したのである。