Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
Read 二つの庭 (ふたつのにわ) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 195,492 characters · 389 screens
「一人でいったら?」
伸子は、何となしおっくうだった。伸子が小説をかいたりするせいもあって、友達となるのは大抵の場合その家の主人であり、そこの細君のこころもちに向ってくばられる神経が伸子として、多くの場合二重の負担だった。主人であるひとと話がはずめばはずむほど、伸子は細君にたいして愛想よくなくてはならない自分を感じた。そして、細君との話題は、主人であるひととの話題とはまるでちがった内容で、素子のように「男のような方」と思われていない伸子はそれが重荷なのであった。現実には、素子の方が、食物のことだの、着物のことだのを遙かにくわしく知っているのに――。
「ぶこちゃんも行くっていってやるよ、いいね、十日に――」
ハガキをかきながら素子は、
「ぶこちゃんのひっこみ思案は、謙遜からじゃなくて、傲慢からさ」
といった。
「だからどしどし、ひっぱりだしてやるんだ」
約束した日の午後、素子と伸子とは一旦新宿でおりて、小川豊助のところへもってゆく手みやげを買った。
「タバコにしよう」
素子が新宿駅のプラットフォームを歩きながらきめた。
「自分じゃなかなか気ばれないもんだから」