Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

Read 二十四の瞳 (にじゅうしのひとみ) by 壺井 栄 (つぼいさかえ) in Japanese with furigana. JLPT N3. Tap a word for the meaning.

N3 · intermediate · modern kanji and kana · 113,429 characters · 227 screens

Aozora Bunko

せんせえ またおいでェ……

足がなおったら またおいでェ……

やくそく したぞォ……

あのとき、じぶんのあとへ赴任していった老朽の後藤先生と同じように、じぶんもまた人にあわれまれているとも知らず、いや、大石先生がそれを知らぬはずはなかった。しかし幼い二人の子をかかえた未亡人の彼女もまた、やはり後藤先生と同じく、よろこんで岬へゆかねばならなかったのだ。しかし彼女はいま、近づいてくる岬の村の山々の、夜気に洗われた緑のつややかさを見ると、じぶんもまた若がえってくるような気がした。昔、洋服も自転車も人にさきがけた彼女も、今では白髪まじりの髪の毛を無造作にひっつめ、夫の着物の紺がすりで作ったモンペをつけ、小さな息子に舟でおくられている。昔のおもかげを強いてさがせば、きゅうにかがやきだした瞳の色と、若々しい声であるかもしれぬ。なまいきといわれてけなされた彼女の洋服や自転車は、それがきっかけになってはやりだし、いまでは村に自転車に乗れぬ女はないほどだ。だが二十年近い歳月は、もうだれも若い日の彼女をおぼえてはいまい。

陸地がすうっとすべるように近づいたと思うと、船はもう渚ちかく寄っていた。