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かたきうちきょうだいがさ

仇討姉妹笠

国枝 史郎

Read 仇討姉妹笠 (かたきうちきょうだいがさ) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 80,178 characters · 159 screens

Aozora Bunko

二声ばかり悲鳴が起こった。

バラバラと囲みが解けて散った。

乱れた髪、乱れた衣裳、敵の返り血を浴びて紅斑々! そういう姿の山岸主税は、血刀高々と頭上に捧げ、樫の木かのように立っている。

が、彼の足許には、死骸が二つころがっていた。

一人を取り囲んで十数人が、斬ろう突こうとしたところで、味方同士が邪魔となって、斬ることも突くことも出来ないものである。

そこを狙って敵二人まで、主税は討って取ったらしい。

地団太踏んで口惜しがったのは、飛田林覚兵衛であった。

「云い甲斐ない方々!」と杉の老木が、桶ほどの太さに立っている、その根元に突立ちながら、

「相手は一人、鬼神であろうと、討って取るに何の手間暇! ……もう一度引っつつんで斬り立てなされ! ……見られい彼奴め心身疲れ、人心地とてない有様! 今が機会じゃ、ソレ斬り立てられい!」

覚兵衛の言葉は事実であった。

先刻よりの乱闘に肉体も精神も疲労果てたらしい山岸主税は、立ってはいたが右へ左へ、ヒョロヒョロ、ヒョロヒョロとよろめいて、今にも仆れそうに見受けられた。

愛する人を

「そうだ!」「やれ!」と覚兵衛の一味が、さながら逆浪の寄せるように、主税を目掛けて寄せた時、遥かあなたの木間から、薄赤い一点の火の光が、鬼火のように不意に現われて、こなたへユラユラと寄って来た。