Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

のぶこ

伸子

宮本 百合子

Read 伸子 (のぶこ) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 232,543 characters · 466 screens

Aozora Bunko

「詩らしいですね――何かに引用してあるんですか」

横田は伸子を顧み、

「どうも西洋の学者は、何ぞと云うと直ぐ羅典や希臘をかつぎ出すから厄介です」

と笑った。

「おいそぎですか」

「いや、いそぎません」

「じゃあお預りして置きます」

また話が途切れ、居心地わるくなった。横田は、

「どうぞよろしく」

と程なく帰った。

見送って再び部屋に戻った。佃は横田の置いて行った紙片を手にとり、立ったまま見ていたが、ふんと云うような表情で、手近い本棚にのせた。伸子は何だか厭な気がした。

「大丈夫? そんなところへ置いて」

「大丈夫ですよ」

佃は伸子がそんな注意を払うのさえ不快らしく、云った。

「いつ頃から来ていたの?」

「なぜ?」

わざとらしい訊きかえしが、殆どひとりでに伸子の唇を辷り出た。

「なぜって――また君の邪魔をしたと思うからですよ、下らないことっきゃ話もないのに」

――伸子は皮肉な顔をして、肩をゆすった。彼女は意地わるい心持になった。佃は、彼女の友達が来ても、恐らく唯の一度もと云ってよいくらい、愉快な対手となった例がなかった。彼が席に現れると来た人は帰り支度をする。女の人でも、それは同じであった。