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ぜんきてんまやけ
前記天満焼
国枝 史郎
Read 前記天満焼 (ぜんきてんまやけ) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 48,568 characters · 98 screens
「それで、只今もおいでなさるので?」
「それが明け方、暗い中に、お帰りなすったと申しますことで」
「お前さんそいつを御存知ない?」
「家内中寝込んで居りましたので……」
「どなたが表の戸を開けましたかい?」
グッと鋭く突っ込んで訊いた。
「寝ずの番の女中のお清という女で……」
「ちょっと聞きたいことがある、お清という女中を呼んで下せえ」
間もなく現われたお清という女中は、年も若いし、ぼんやり者らしく、それに昨夜の寝不足からだろう、眼など真赤に充血させていたが、御用聞に何かを訊かれるというので、ベッタリ縁へ膝をつくと、もうおどおどと脅え込んでいた。それと見て取った松吉は、恐がらせては不可ないと、こう思ったに相違ない、丁寧な調子で話しかけた。
「今朝方帰ったという加賀屋さんの手代、何か持ってはいませんでしたかえ?」
「へい」とお清は考え込んだが、
「何にもお持ちではございませんでした」
「ふうん」と云ったが首を傾げた。
「痩せていましたかえ、肥えていましたかえ? 何さ、着ふくれちゃアいませんでしたかね?」
「へえ」と又もや考えたが、
「気がつきませんでございました」
だがもう一度考えると、