Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Read 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) by 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 81,668 characters · 164 screens
寒い日の光は注連を飾った軒先から射し入って、太い柱や、そこに並んで倒れている牛や、白い被服を着けた屠手等の肩なぞを照らしていた。
そのうちに、ある屠手の出刃が南部牛の白い腹部のあたりに加えられた。卵色の膜に包まれた臓腑がべろべろと溢れ出た。屠手の中には牛の爪先を関節のところから切り放して、土間へ投出すのもあり、胴の中程へ出刃を入れて肉を裂くものもあった。牛の体からは膏が流れて、それが血のにおいに混って、屠場に満ちた。
屠牛の四
私は赤い牝牛が「引割」という方法に掛けられるのを見た。それは鋸で腰骨を切開いて、骨と骨の間に横木を入れ、後部の脚に綱を繋いで逆さに滑車で釣し上げるのだ。屠手は三人掛りでその綱を引いた。
「そら、巻くぜ」
「ああまだ尻尾を切らなくちゃ」
屠手の頭は手ずからその尻尾を切り放った。
「さあー車々」と言うものもあれば、「ホラ、よいせ」と掛声するものもあって、牝牛の体は柱と柱の間に高く逆さに掛った。脊髄の中央から真二つにそれを鋸で引割るのだ。ザクザクと、まるで氷でも引くように。
「どうも切れなくて不可」
「鋸が切れないのか、手が切れないのか」