Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ちくまがわのスケッチ
千曲川のスケッチ
島崎 藤村
Read 千曲川のスケッチ (ちくまがわのスケッチ) by 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 81,668 characters · 164 screens
「どうも甘そうな匂いがする。こんな御土産なら毎日でも頂きたい」と亭主がW君に言った。
細君は戸棚から、膳、茶碗、塗箸などを取出し、飯は直に釜から盛って出した。
「どうしやすか、この炉辺の方がめずらしくて好うごわしょう」
と細君に言われて、私達は焚火を眺め眺め、夕飯を始めた。その時は余程空腹を感じていた。
「さア、肉も煮えやした」と細君は給仕しながら款待顔に言った。
「お竹さん、勘定して下さい、沢山頂きますから」とW君も心易い調子で、「うまい、この葱はうまい。熱、熱。フウフウ」
「どうも寒い時は肉に限りますナア」と亭主は一緒にやった。
三杯ほど肉の汁をかえて、私も盛んな食欲を満たした。私達二人は帯をゆるめるやら、洋服のズボンをゆるめるやらした。
「さア、おかえなすって――山へ来て御飯がまずいなんて仰る方はありませんよ」
と細君が言ううち、つとW君の前にあった茶碗を引きたくった。W君はあわてて、奪い返そうとするように手を延ばしたが、間に合わなかった。細君はまた一ぱい飯を盛って勧めた。
W君は笑いながら頭を抱えた。「ひどいひどい――ひどくやられた」
「えッ、やられた?」