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ふるきミニエチュア
古き小画
宮本 百合子
Read 古き小画 (ふるきミニエチュア) by 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 70,298 characters · 140 screens
御覧なさいませ。ただ一色に光るだけなら、間抜けな奴隷女の頸飾でもする芸です。ほら」
商人はうまく光線を受けて、虫の卵ほどの宝石をきらりと、燐光のような焔色に閃かせた。そのまま一寸光の受け工合を更えると、玉は、六月の野のように、燃る肉色や濃淡の緑、溶けるような空色、深い碧をたたえて色種々に煌(かがや)く。
「この一粒が、百の、紅玉、緑石に当ります。イランの王は、この素晴らしい尊さの代りに、失礼ながら私共の嚢の中では屑同様な縞瑪瑙(しまめのう)に、胎み羊二十匹、お払いなされました」
彼は、狡く瞼も引下げ、悪口でスーラーブに阿諛(あゆ)した。シャラフシャーに、珍らしい蛋白石を手渡していたスーラーブは、その言葉で、俄に心が眼醒めたようになった。彼は思わず男の顔を見なおし、唾をのんだ。そして調子を変えまいと思って、却って不自然な、低い物懶(ものう)そうな声で、
「卿は、イランから来たのか?」
と訊ねた。
「仰(おおせ)の通りでございます。宝石の珍しいものを集め、君様の御意を得ますには、どうしてもイランから東へ、参らねばなりませんので……」
スーラーブは、わざと、見る気もない土耳古玉を一つ手にとりあげて弄った。