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こくをみる
古句を観る
柴田 宵曲
Read 古句を観る (こくをみる) by 柴田 宵曲 (しばたしょうきょく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 166,028 characters · 333 screens
普通に景中情ありなどという平凡なものではない。実景実感の直に読者の胸に迫る句である。
うたゝねのかほのゆがみや五月雨 釣壺
五月雨に降りこめられたつれづれにうたたねをしている人がある。ふとその顔を見ると、どういうものか歪んで見える。そこに或寂しさを感じた、というのである。
病人などでなしに、うたたねの人であるところがこの句の面白味である。少し老いた人のような気がするが、必ずしもそう限定せねばならぬというわけではない。
蜀魂啼や琴引御簾の奥 吾仲
作者はこの場合、御簾の外にいるものと思われる。ほととぎすが啼き渡る、御簾の奥では今琴を弾きつつある、という情景である。
必ずしも平安朝の物語を連想する必要はないが、奥深い、大きな屋形であることは疑を容れぬ。琴を弾ずる人は恐らくほととぎすの声が耳に入らぬのであろう。『虞美人草』の文句にある通り、「ころりんと掻き鳴らし、またころりんと掻き乱」しつつある。
音に音を配合するのは、一句の効果を弱めるという人があるかも知れない。しかしそれは御互に即き過ぎて、相殺作用を起す場合の話であろう。この場合のほととぎすは琴を妨げず、琴もまたほととぎすを妨げない。