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よしわらしんわ
吉原新話
泉 鏡花
Read 吉原新話 (よしわらしんわ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 37,157 characters · 75 screens
が、どうして勢がこんなであるから、立続けに死霊、怨霊、生霊まで、まざまざと顕れても、凄い可恐いはまだな事――汐時に颯と支度を引いて、煙草盆の巻莨の吸殻が一度綺麗に片附く時、蚊遣香もばったり消えて、畳の目も初夜過ぎの陰気に白く光るのさえ、――寂しいとも思われぬ。
(あら可厭だ)……のそれでは無い。百万遍の数取りのように、一同ぐるりと輪になって、じりじりと膝を寄せると、千倉ヶ沖の海坊主、花和尚の大きな影が幕をはびこるのを張合いにして、がんばり入道、ずばい坊、鬼火、怪火、陰火の数々。月夜の白張、宙釣りの丸行燈、九本の蝋燭、四ツ目の提灯、蛇塚を走る稲妻、一軒家の棟を転がる人魂、狼の口の弓張月、古戦場の火矢の幻。
怨念は大鰻、古鯰、太岩魚、化ける鳥は鷺、山鳥。声は梟、山伏の吹く貝、磔場の夜半の竹法螺、焼跡の呻唸声。
蛇ヶ窪の非常汽笛、箒川の悲鳴などは、一座にまさしく聞いた人があって、その響も口から伝わる。……按摩の白眼、癩坊の鼻、婆々の逆眉毛。気味の悪いのは、三本指、一本脚。
厠を覗く尼も出れば、藪に蹲む癖の下女も出た。米屋の縄暖簾を擦れ擦れに消える蒼い女房、矢絣の膝ばかりで掻巻の上から圧す、顔の見えない番町のお嬢さん。