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よしわらしんわ
吉原新話
泉 鏡花
Read 吉原新話 (よしわらしんわ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 37,157 characters · 75 screens
足許だけぼんやり見える、黄昏の木の下闇を下り懸けた、暗さは暗いが、気は晴々する。
以前と違って、それから行く、……吉原には、恩愛もなし、義理もなし、借もなし、見得外聞があるじゃなし……心配も苦労も無い。叔母さんに貰った仲の町の江戸絵を、葛籠から出して頬杖を支いて見るようなもんだと思って。」
十四
「坂の中途で――左側の、」
と長火鉢の猫板を圧えて言う。
「樹の根が崩れた、じとじと湿っぽい、赤土の色が蚯蚓でも団ったように見えた、そこにね。」
「ええ」
と梅次は眉を顰めた。
「大丈夫、蛇の話じゃ無い。」とこれは元気よく云って、湯呑で一口。
「人が居たのさ。ぼんやりと小さく蹲んで、ト目に着くと可厭な臭気がする、……地へ打坐ってでもいるかぐらい、ぐしゃぐしゃと挫げたように揉潰した形で、暗いから判然せん。
が、別に気にも留めないで、ずっとその傍を通抜けようとして、ものの三足ばかり下りた処だった。
(な、な、)と言う。
雪駄直しだか、唖だか、何だか分らない。……聞えたばかり。無論、私を呼んだと思わないから、構わず行こうとすると、
(なあ、)と、今度はちっとぼやけたが、大きな声で、そして、