Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

うたのたてやましんじゅういっきょく

唄立山心中一曲

泉 鏡花

Read 唄立山心中一曲 (うたのたてやましんじゅういっきょく) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 30,835 characters · 61 screens

Aozora Bunko

(打て、お打ちなさい。)

(唯今。)

と肩を軽く斜めに落すと、コオトが、すっと脱げたんです。煽りもせぬのに気が立って、颯と火の上る松明より、紅に燃立つばかり、緋の紋縮緬の長襦袢が半身に流れました。……袖を切ったと言う三年前の婚礼の日の曠衣裳を、そのままで、一方紫の袖の紋の揚羽の蝶は、革鞄に留まった友を慕って、火先にひらひらと揺れました。

若奥様が片膝ついて、その燃ゆる火の袖に、キラリと光る短銃を構えると、先生は、両方の膝に手を垂れて、目を瞑って立ちました。

(お身代りに私が。)

とお道さんが、その前に立塞がった。

「あ、危い、あなた。」

と若旦那が声を絞った。

若奥様は折敷いたままで、

(不可ません――お道さん。)

(いいえ、本望でございます。)

(私が肯きません。)

と若奥様が頭を掉ります。

(貴方が、お肯き遊ばさねば、旦那様にお願い申上げます。こんな山家の女でも、心にかわりはござんせん、願を叶えて下さいまし。お情はうけませんでも、色も恋も存じております。もみじを御覧なさいまし、つれない霜にも血を染めます。私はただ活きておりますより、旦那さんのかわりに死にたいのです。