Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
しおばな
塩花
豊島 与志雄
Read 塩花 (しおばな) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 12,421 characters · 25 screens
」
未亡人は嬉しそうだった。
出されたのをつまんでみると、なるほど甘かった。それで山口は、そのような物を茶菓子に出されたことを、自分に対する未亡人の寵遇だと解釈し、これほど甘いものなら自分も拵えてみたいからと媚びて、実地見学を申し出た。
干し場は二階のバルコニーにあった。薩摩芋をごく柔くふかし、皮をむき、半センチぐらいの厚さに切り、簾の上に並べて、太陽の光に数日間曝すのである。
山口がそのバルコニーに出ると、丁度、魚住千枝子が、簾の上の干し芋を裏返してるところだった。
「おや、あなたもお手伝いですか。いま、奥さんから、さんざん自慢されたところです。」
彼女は立ち上って、真面目なお辞儀をした。それで山口は、ちょっとまごついて、お辞儀を返しながら言った。
「先日は失礼しました。吉村さんのところで……。」
彼女はちらと微笑んで、また芋の方にかかった。
「時々、吉村さんのところへお出でになるんですか。」
「ええ、書物を拝借しましたり、お話を伺ったりしますので……。」
彼女は振り向きもせずに答えたが、その横顔が、さっと血の色を湛えたまま緊張して、殆んど透明と言えるほどに冴え返った。