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やしゃがいけ

夜叉ヶ池

泉 鏡花

Read 夜叉ヶ池 (やしゃがいけ) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 27,689 characters · 56 screens

Aozora Bunko

聞えた。……唄の声がこの月に、白玉の露を繋いで、蓬の草も綾を織って、目に蒼く映ったと思え。……伴侶が非常に感に打たれた。――山沢には三歳になる小児がある。……里心が出て堪えられん。月の夜路に深山路かけて、知らない他国にうことはまた、来る年の首途にしよう。帰り風が颯と吹く、と身体も寒くなったと云う。私もしきりに胸騒ぎがする。すぐに引返して帰ったんだよ。(と穏に、百合に向って言い果てると、すッと立って、瓢を逆に、月を仰いで、ごッと飲む。)

百合、のび上って、晃が紐を押え頸に掛けたる小笠を取り、瓢を引く。晃はなすを、受け取って框におく。すぐに、鎌を取ろうとする。晃、手を振って放さず、お百合、しかとその晃の鎌を持つ手に縋りいる。

晃 帰れ、君たちア何をしている。

初雄 更めて断るですがね、君、お気の毒だけれども、もう、村を立去ってくれたまえ。

晃 俺をこの村に置かんと云うのか。

初雄 しかりです。――御承知でもあるでしょう、また御承知がなければ、恐らく白痴と言わんけりゃならんですが、この旱です、旱魃です。……一滴の雨といえども、千金、むしろ万金の場合にですな。君が迷信さるる処のその鐘はです。