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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
Read 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 159,272 characters · 313 screens
「この世にあるものなら、色があるだろう」
「うむ――色もあるにはある、色は即ち空、空は即ち色なりといって、魂だって、色が無えという理窟は無え」
と、道庵が力みました。
「それで、どんな形をしているんだね、先生、その魂は……」
米友はすかさず突っかける。
「なに、その魂の形かい……およそ形のあるものは潰れずということなく……」
とかなんとかいってみましたけれど、さすがの道庵シドロモドロで、その足もとの危ないこと、酒のせいばかりではありますまい。
事実、この一本槍は、米友が手練の杖槍よりもその穂先が深い――また、この負担は、米友の肩にかけた振別を押ッつけられたよりも、道庵にとっては重い。
さきには、出任せに、一種の霊魂不滅を説いて米友に聞かせたが、それこそ本当の道庵流の出任せで、かりに一時の気休めに過ぎない。道庵自身が果して、霊魂の不滅を信じているかどうかは頗る怪しいものです。だから、正式にこういって、色は、形はと、ジリジリ突っ込まれてみると、相手がどこまでも真剣なのだから、魂は青い色をして、雨の夜に墓場の上で燃えているなんぞと、ごまかしきれない。
道庵は苦しまぎれに、瓢箪をハタハタと叩き出してみたが、瓢箪から駒も出ないし、真理も出て来ない。