Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

Read 大菩薩峠 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 159,272 characters · 313 screens

Aozora Bunko

四

時なるかな、宇治山田の米友は、峠の町から軽井沢の桝形の茶屋まで、真一文字に飛んで参りました。

「先生はどうした、おいらの道庵先生がこっちへ見えなかったかい……」

ここに桝形の茶屋というのは、軽井沢の駅の上下の外れの両端に、桝形に石を築いた木戸があって、そこに数軒の茶屋が並んでいる。追分節の歌の文句の一つにも、

送りましょかい

送られましょか

せめて桝形の茶屋までも

とあるのがそれです。

「え、先生、あのお医者さんの、あなたがそのお連れさんでしたか。これはどうも、今お迎えに出かけましたところで……それでお気の毒ですが、時の災難と思召して下さいまし、まことにハヤ、なんとも……」

木戸番と、宿から迎えに出た男衆とが、米友を見かけて、まずお見舞と、申しわけをするような口ぶりが、どうも合点がゆきません。

「時の災難だって……?」

「まことにどうも……」

「おいらの先生は来たか、来ねえか、それを聞いてるんだぜ」

「それが、どうも大変な事になっちまいましてね」

「何、何が大変だい――」

米友が思わず意気込みました。

「だからお留め申したんですけれども、お聞入れがないもんだから、仕方がございません」