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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Read 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 285,635 characters · 558 screens
「胡笳というのとは、違いますか」
「それは違いましょう、笳というのは、ヒチリキの異名だそうですが、胡笳というのは、いかなる笛かよく知りませんが、蒼涼たる原始的の響きがあるものとは想像されます――君聞かずや胡笳の声最も悲しきを、紫髯緑眼の胡人吹く、これを吹いてなお未だ終らざるに、愁殺す楼蘭征戍の児……」
と田山白雲が吟声に落ちて行くところは、御当人が茂太郎を笑いながら、御当人自身も、茂太郎にかぶれたところがあるようにも思われる。それを駒井が、どちらにも注意を払いながら、
「あなたは詩吟が上手ですね」
「上手といわれては恐縮しますが、口癖のようなもので、やっぱりでたらめです、でたらめとは言いながら、茂太郎に比べると、節調はまずいが、思想と、感情と、文字とを崩さないところだけは取柄でしょう」
「ひとつ、あなたの詩吟をお聞かせ下さい、ここで……幸い、その胡笳の詩を最後までおうたい下さい」
「やってみましょうか」
そこで駒井がこころもち先に立ち、白雲が少しおくれて歩きながら、御所望の詩吟にとりかかろうとして、
「では、まず、淡窓流で一つやってみることにしましょう」
「お待ちなさい、淡窓流というのは何です」