Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Read 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 285,635 characters · 558 screens
「つまらねえなあ」と嘆息した時分に、首をのばして、
「先生」
唐紙越しに言葉をかけました。
「グウ、グウ」
という返事です。
「先生」
「グウ、グウ」
相変らずふざけきったもので、口いびきで先生が答えるのを、米友は腹も立てず、
「先生、もう寝なすったかい」
「寝たよ」
「何か御用はないかね、なけりゃ、おいらも寝るよ」
「ああ、お前もお休み」
「どっこいしょ」
主人に先立って寝ず、という米友の神妙な忠勤ぶりで、道庵が寝床に納まったと見届けたから、そこで米友も蒲団をあけて、身を運ばせながら、
「先生」
「何だい」
「お前、夜中に這い出しちゃいけねえよ」
と、何の意味か米友が道庵に向って駄目を押すと、道庵がしゃらけきって、
「心配するなよ」
と答えました。
これは米友としても、変な念の押し方で、道庵としても歯切れの悪い返答ぶりでありました。何となれば、夜中に這い出そうとも、這い出すまいとも、赤ん坊じゃあるまいし、よけいな世話を焼いたもので、それをまた道庵ともあるべき理窟屋が、文句なく受取ったのみならず、幾分、良心に疚しいところのあるような歯切れの悪い返答ぶりが、いつもとは少しく調子が変っているのだが、誰もそれを、この場でとがめる者はありません。