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だいぼさつとうげ
大菩薩峠10
中里 介山
Read 大菩薩峠10 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 285,635 characters · 558 screens
やにわに飛びつかれたので道庵は、一たまりもなく、馬からころげ落ちてしまいました。
馬から転げ落ちた道庵を、土まで落ちない先に受け留めた米友は、それを馬の背の上へ押し乗せて、自分がその口を取って走るというよりは、馬の口にブラ下がって走りました。
こうして米友が、川岸の溺死人の騒ぎ場へ道庵を連れ込んだのは、長い時間の後のことではありません。
現場へつれて来られてから後の、道庵先生の働きぶり。
道庵はまず、かけつけて、畳をむしりこわしたりなんぞして、藁火を焚いて、溺死人をあぶって騒いでいるのを押しわけて、その被害者を一応診察して、助かるべきものか、助かるべからざるものかを検断して、これは助かるという見込みをつけました。
「肛門から出血もしていないし、手足も硬直しているというわけではない、水は飲んでいるが、そう多分のことはない、多分のことはないが、それを吐かせきってしまうのが急務だと考える」
こう考えたものでしたから、米友をして、この溺死人の両足を肩にかけて、充分に身をかがめさせて、二十間ほど走らせました。そこで溺死人が、飲んだ限りの水をブクブクと吐きつくしてしまった時、米友が、また以前の場所に立戻った時は、死人は立派に生き返っておりました。