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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
Read 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 368,567 characters · 720 screens
「は、は、は、は」
と第二笑に附した東造爺は、ほかの者がしたように冷たいものではなく、その中には多分の同情を含んだ会釈を以て慰め面に、
「お前たちが見たというスッテンドウジは違うよ、性がわかってるよ、驚くには当らねえよ」
「爺、お前、知ってるのかい、あのスッテンドウジを……」
「は、は、は、お前たちが黒灰の浦で見たというのは、髪の毛の紅い、眼のでっけえ、海ん中に浮袋を持って、浮いたり沈んだりしていた奴だろう。あれは、スッテンドウジじゃねえのさ、おらが家のお客様だよ」
「え、お前んちのお客様?」
「そうさ、もうやがて、ここへ帰って来るから見てえろ」
「鮪取りの善さんじゃねえだろな」
「違うよ、全く別のお客様だよ」
「そうか、ほんとうにお前んちのお客様かえ。でも、大江山のスッテンドウジにそっくりだったぜ。お前んちにあんなお客様が、どこから来ていたんだ」
その時、真向うの畑道から、問題のスッテンドウジが抜からぬ面でやって来る。
四
来て見れば、これは極めて結構人らしい一個の西洋人で、東造爺に向って何か一言二言いっては、大きな面をゆすぶって、にやにやと笑っているところ、どうしても恐怖ではなく、滑稽の部に属しているものですから、力瘤を入れた子供たちも安心して、傍へ寄って来て、しげしげとながめます。