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だいぼさつとうげ
大菩薩峠11
中里 介山
Read 大菩薩峠11 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 368,567 characters · 720 screens
助平のつもりでかいていなさるんじゃない、芸術のためなんでしょう」
「生意気をお言い。何にしたって、こんな恥かしいところをかかれちゃいや」
兵部の娘は手をさしのべて、筆立から筆を抜き取り、墨を含ませると、ズブリとその絵を塗りつぶしてしまったから、清澄の茂太郎が、その勇敢に、あっ! とたまげました。
「茂ちゃん、お前のことも、ずいぶんかいてありますよ」
「わたしは、かかれたってかまわない」
「それから、駒井の殿様も、金椎さんも、マドロスさんも、みんないいかげんのところがかきうつしてしまってあるのよ、ほんとに絵かきの先生に逢っちゃ、たまらないと思うわ」
「商売なんだもの」
「こっちの方をごらん、造船所から、竜燈の松の方まで、風景がすっかり写し取ってあるのよ」
「商売だもの」
「いくら商売だってお前、こんなに、一から十までかいておいて、知らん顔をしているのは憎いわねえ……およしよ、茂ちゃん、うるさいわよう」
茂太郎が、あんまり摺寄って来て、肩から首筋へかけた手を十分に深くして、下に置いてある絵をのぞき込むものだから、兵部の娘は、負うた子に髪をなぶらるるようにうるさがって、首を振るのを、茂太郎はいっこう遠慮をしないで、