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だいぼさつとうげ
大菩薩峠16
中里 介山
Read 大菩薩峠16 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 268,946 characters · 520 screens
賢母らしい人は信じきって、こう言うのですから、義理にも冗談とは受取れないので、ばかばかしいと思いながら、覆面の黒い姿はそのままでもう一歩進んでみました。
「そんならそうとして、さて、あなた方は何の目的でそれをたずねておいでになる」
と、駄目を押すようにしてみると、
「左様でござります、その藤吉郎に、この子供の身を託したいと思いまして、これはわたくしのせがれでござりますが、ごらんくださいませ」
と言って、母なる人は後ろを振返り、踏み止まってその提灯を、殿にいる十二三の男の子の面に突き出しました。
そこで、この子の面目が照らし出され、その突きかざした提灯がくるりと廻ると、まず最も鮮かに浮き出したのは、提灯に描かれた蛇の目と桔梗の比翼に置かれた紋所でありました。
四十四
その提灯の光りに照らし出された十二三の少年は、臆するところのない沈勇の影を宿した面を向けて、しとやかに立っておりました。
それを見て、黒い姿は、何か神妙な気持にうたれたと見え、
「どうです、この辺で一休みして参ろうではござらぬか――あなた方は何か御由緒もありそうな人たち、お身の上を、ゆっくり承ってみたいものだ」