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だいぼさつとうげ

大菩薩峠7

中里 介山

Read 大菩薩峠7 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 242,044 characters · 477 screens

Aozora Bunko

といってその手桶を土間へかつぎ込んだのと、駒井甚三郎が紙包の上へ、駒井家回向料の文字を認め終ったのと同時でした。

「あ!」

米友が舌を捲いて、手桶を抛り出して、駒井の面をキッと見つめたのもその時です。

「やあ、手前は駒井能登守だな」

そのクルクルと廻った円い眼には、おどろきのほかに憤りが燃えています。

駒井甚三郎は筆を下に置いて、

「おお、お前は友造ではないか」

はじめて、米友の面をまともに見ました。

「うーむ」

米友は、駒井の面を見ていると、むらむらとして、衷心の憤りと、憎しみとが、湧き起るのを禁めることができないと見えて、その拳がワナワナと動いて、頓には口も利けないでいるのを、駒井はそれと知る由もないから、尋常に、

「お前はこの寺にいたのか。ナゼ甲府を出る時に、だまって出ました」

「だまって出ちゃ悪かったかい」

駒井が尋常に出るのを、米友は、喧嘩腰ですから、この時、駒井が怪しみをなしました。しかし、駒井自身においては、よくこの男の性格を知っているつもりだから、至極おだやかに、

「帰るなら帰るように、わしにも一言いってくれるとよかった」

しかしながら宇治山田の米友は、この時、堪忍袋が切れたように飛び上って、