Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
だいぼさつとうげ
大菩薩峠7
中里 介山
Read 大菩薩峠7 (だいぼさつとうげ) by 中里 介山 (なかざとかいざん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 242,044 characters · 477 screens
「おや?」
といって百の面の色が変ったのは、単に出そこなった釘の頭や、材木のそそくれにひっかかったのではない、刀の小柄で念入りにピンと、その合羽の裾が根太へ縫いつけられてあったからです。
「誰だい、こりゃあ」
さすがのやくざ者も、これには少しばかり度肝を抜かれました。自分が有頂天になって、六所明神を向うに廻しての策戦を考えているうちに、後ろにいてこういうたちの悪いいたずらをした奴がある。それをうっかり気がつかずに引張り込まれたなぞは、返す返すもドジだ。昨夜の逃げ出し以来、どうもがんりきの風向きが悪いと、自分ながら業が煮えて、
「誰だい、こんな悪戯をしたのは」
抜き取った小柄を手にして、堂の後ろを見込んで呼びかけてみたが、がんりきの心持では、こういう悪戯をする奴はほかにはない、七兵衛の奴が後ろに隠れていてやったのにきまっている、一杯食わされたなという心持で呼んでみたのですが、
「がんりき」
といって、物騒がずに堂の後ろから姿を現わしたのは、意外にも七兵衛ではありません。形こそ七兵衛に似たような旅人の風はしているが、第一、七兵衛よりは物々しい声であって、全く七兵衛とは別人に相違ないから、ここでもがんりきの百が見当外れで、