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きじゅつこうあんぎょう
奇術考案業
長谷川 伸
Read 奇術考案業 (きじゅつこうあんぎょう) by 長谷川 伸 (はせがわしん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 4,145 characters · 9 screens
「あれも無論結構ですが、私ならこうしますな」
思いついた考案を語ったので、仙辰も太夫元も色を消して驚いた。それから態度が一変して、弥兵衛は梅玉斎仙辰一座から特別待遇をうけた。
弥兵衛の渡世はこうして門が開かれた。
半年に一つ宛、弥兵衛は仙辰一座にネタを売った、生活はそれで立った。
奇術魔術のネタは外国からカタログを送ってくる、それを見てよさそうなのを買い込み、特殊の工夫を加えて舞台へかける、だから仙辰一座は日本では第一位を常にしめている。長曲斎仙花一座、これも二といって三に下らぬが、万端何彼と仙辰一座には及ばなかった。弥兵衛は仙辰一座に二つ売り、仙花一座には一つ売る、という風にやっていた。
弥兵衛は或るとき、箱抜け――甲を箱に入れて消えさせその代りに乙を出すといった風のもの――の根本的改革を思い立った。かなり苦心して漸く一通りの纏まりをつけ模型をつくった。今度の模型は従来のと違って、真物同様なものをつくった。これは自分でも精力を傾倒したものだけに、ツイそこまで奮発したのである。
小学校へ通っている弥兵衛の長女が、その日突然見えなくなった。母親が頻りに心配しているのに、弥兵衛は存外平気を装っていた、しかし、隠し切れない懊悩がその顔に出ていたので、事実は直ぐわかった。