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おんなごころしゅうい
女心拾遺
矢田 津世子
Read 女心拾遺 (おんなごころしゅうい) by 矢田 津世子 (やだつせこ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,514 characters · 36 screens
炬燵を離れては夫人がつらかろう、と劬わって、麻雀卓を櫓の上へのせるようにと指し図をするのである。やがて、仕度が整うと、座席が定められた。唐沢氏の右隣りがおしも、それから夫人に慶太郎という順である。おしもはいつものニコニコした顔で牌を取り、忘れたり順序を間違えたりする。そのたびに、唐沢氏は大笑いして、代って牌を取ってやったり眼くばせで順を教えたりする。それを見ている慶太郎は、物好きな眼つきでちょいちょいと老夫人の方を見やる。母にそれを知らせてやりたい悪戯っぽい心からである。老夫人には、その息子の眼ざしが気になった。あのことあって以来、慶太郎のおしもを見る眼ざしが変ってきていると気付く。これまで女中としてしか見ていなかったその眼が、急に、女としてのおしもを興味深く眺めてきたとも思われる。この頃、用もないのに慶太郎が女中部屋をのぞきこんで、おしもを揶揄っているのを見かけることがある。おしもの方でも、そんなことが嬉しいらしく、きゃっきゃっと声を立てて笑いこけている。そんな時には、唐沢氏を警戒する心が同時に慶太郎へも向けられて、眼ばなしのならぬ思いをする。