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ようちゅう
妖虫
江戸川 乱歩
Read 妖虫 (ようちゅう) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 120,290 characters · 239 screens
それから竹藪の迷路の中心に達するまで、人形は怖くないと云うものの、ガサガサと藪をゆすって飛び出すからくり仕掛けのお化人形、幽霊人形に、珠子は幾度胆を冷したことであろう。本来ならば、足元の見える程度に、薄暗い電燈がついているのだが、悪党達は態とそれを点火せず、ただチロチロ揺れる懐中電燈の光丈けをたよりに、竹藪のアーチをくぐって行くのだから、その不気味さは一入であった。
ある箇所では、足下にポッカリ口を開いた古井戸があって、その底に溺死人のドロドロにくずれた顔が浮いているかと思うと、ある箇所では、頭の上から、サッと風を切って、振り乱した白髪に藍色の顔、まん丸に飛び出した片眼、耳まで裂けた血みどろの口で、痩せさらぼうた老婆の幽霊が襲いかかる。又ある箇所には、真赤な腰巻一枚の裸体の女人形が、藪の中から美しい顔でニタニタと笑いかけているのだ。
それらの妖怪共を、一々記していては際限がない。兎も角も、ありとあらゆる魑魅魍魎の中を潜って、珠子等は場内中央の広場に達した。
そこは、四方を竹藪で囲まれた、十坪程の円形の空地であったが、悪党共が予め用意をして置いたものか、ここ丈けは、片隅の柱の上に、小さな電燈が一つともって、空地全体が霧の中の景色のように、陰惨にぼかされていた。