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おんなけいず
婦系図
泉 鏡花
Read 婦系図 (おんなけいず) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 172,760 characters · 343 screens
主税がまた此地へ来ると、ちとおかしいほど男ぶりが立勝って、薙放しの頭髪も洗ったように水々しく、色もより白くすっきりあく抜けがしたは、水道の余波は争われぬ。土地の透明な光線には、(埃だらけな洋服を着換えた。)酒井先生の垢附を拝領ものらしい、黒羽二重二ツ巴の紋着の羽織の中古なのさえ、艶があって折目が凜々しい。久留米か、薩摩か、紺絣の単衣、これだけは新しいから今年出来たので、卯の花が咲くとともに、お蔦が心懸けたものであろう。
渠は昨夜、呉服町の大東館に宿って、今朝は夫人に迎えられて、草深さして来たのである。
仰いで、浅間の森の流るるを見、俯して、濠の水の走るを見た。たちまち一朶紅の雲あり、夢のごとく眼を遮る。合歓の花ぞ、と心着いて、流の音を耳にする時、車はがらりと石橋に乗懸って、黒の大構の門に楫が下りた。
「ここかい。」とひらりと出る。
「へい、」
と門内へ駈け込んで、取附の格子戸をがらがらと開けて、車夫は横ざまに身を開いて、浅黄裏を屈めて待つ。
冠木門は、旧式のままで敷木があるから、横附けに玄関まで曳込むわけには行かない。
男の児が先へ立って駈出して来る事だろう、と思いながら、主税が帽を脱いで、雨あがりの松の傍を、緑の露に袖擦りながら、格子を潜って、土間へ入ると、天井には駕籠でも釣ってありそうな、昔ながらの大