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いえ

家

島崎 藤村

Read 家 (いえ) by 島崎 藤村 (しまざきとうそん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 126,748 characters · 254 screens

Aozora Bunko

お雪の許へ宛てて勉からは度々文通が有る。復たお雪は受取った。彼女は勉から来る手紙の置場所に困った。

ある日、三吉は勉からお雪へ宛てた手紙を他の郵便と一緒に受取った。

「勉さんからはよく手紙が来るネ」

こう三吉はお雪を呼んで言って、何気なくその手紙を妻の手に渡した。

どういう事柄が書かれてあるにもせよ、それを聞こうともしなかった程、三吉は人の心を頼んでいた。こういう文通の意味を略彼も想像しないではなかった。しかし、それに驚かされる年頃でもなかった。彼は、自分が種々なところを通り越して来たように、妻もまた種々なところを通り越して、そして嫁いて来たものと思っていた。お雪も最早二十二に成る。こうして種々な手紙が新しい家まで舞込んで来るのは、別に三吉には不思議でもなかった。唯、妻が自己の周囲を見過らないで、従順に働いてくれさえすればそれで可い、こう思った。彼には心を労しなければ成らないことが他に沢山有った。

畠の野菜にもそれぞれ手入をすべき時節であった。三吉は鍬を携えて、成長した葱などを見に行った。百姓の言葉でいう「サク」は最早何度かくれた。見廻る度に延びている葱の根元へは更に深く土を掛けて、それから馬鈴薯の手入を始めた。