Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
さむはし
寒橋
山本 周五郎
Read 寒橋 (さむはし) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 18,416 characters · 36 screens
二
――げんきんなものだ。
父親がそう思っているような感じである。気の勝ったお孝には恥ずかしいが、いろいろな面で云って恥ずかしいが、どうしたって鏡に向うことが多いし、その時間が長くなるのは、これは自分でもいまさらどうにもならない。――春が来て花が咲くようなもんだもの、いいじゃないの。などといっそ肚を据えたかたちであった。
「どうするの、お父つぁん、夜釣りにゆくんならお弁当のしたくをするけれど」
「――時三はあした休みじゃあないのか」
「いやよ、あしたは六間堀へ菊見にゆくんですもの、釣りになんぞさそいだしちゃだめよ」
「――まるっきり独り占めだ」
「いいじゃないの夫婦ですもの、お父つぁんの御亭主じゃあるまいし、……その代り今夜はおいしい物をおごってあげるわ、お父つぁんの大好きなおいしい物、ね、いいでしょ」
二
本所六間堀と森下にまたがって、植辰という大きな植木屋がある。そのころ菊は染井というのが一般的であったが、数年まえから植辰でも力みだして、一種の風格ある花壇を作って展観させた。大輪とか変り咲きとか懸崖などの、人工の加わったものは少ない、ごくありきたりの種類をごく怠慢にそだてたふうである。