Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
さんけいにいくるひとびと
山谿に生くる人々
葉山 嘉樹
Read 山谿に生くる人々 (さんけいにいくるひとびと) by 葉山 嘉樹 (はやまよしき) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 33,699 characters · 67 screens
と、大山は、山のすぐ下になっている、奥の間に行って、何かマゴマゴ探している、おかみに怒鳴った。
おかみは、何か大切なもの、あるいは命よりも大切なものを探そうとでも、するように、暗い奥の間をウロウロしていたが、大山の、これも異常な響を持った言葉に、諦めたのか、見付ける事ができたのか、下駄をつっかけて表に飛び出して来た。
皆が飛び出したのを見届けると、大山は引っ返して、崩れ落ちようとする、山の下へ行こうとしたが、その山の見える下の道まで引っ返して来た時、山から目が離せなくなった。
――上がっているうちに、山が来るかも知れない。――
と思うと、そこ――椿の木が茂って、墓が少し立ち並んだ辺――へ、生えたように立ち尽して、切り取りの山に見入った。
五秒、十秒、一分、時は極めてゆるやかに経って行った。
ああ、時というものは、ゆっくりする時もあるし、無暗に忙しがる時もあるものだ。失業者には癪に障るほど、時間はのろのろしているし、ようやく仕事にありついた者には、勘定日から勘定日への間には、時間は真空状態みたいに、早いのだ。ことに勘定日の時間の速度などというものは、それは、受取ったためしのある稼ぎ人でなければ、分らない話である。