Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

かわばたやなぎ

川端柳

豊島 与志雄

Read 川端柳 (かわばたやなぎ) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 2,612 characters · 6 screens

Aozora Bunko

それが暫く行くうちに、益々薄暗くなってきて、真暗な橋のところに出た。

「捨てていこう。」と老人がふいに云った。

「ここにですか。」

「ああ。」

で私は、風呂敷包みをそこに捨てようとした。とたんに、惜しいな、と思った。

そこで夢が覚めた。

薄暗い電灯の光で、室の中がぼんやり意識された。耳を澄すと、夜明近くらしい外の気配だった。

おかしな気持だった。万引をしている時の素晴らしい感覚が、変に胸の中にこびりついていた。

そして私は、刑務所長から聞いた竊盗囚の話をはっきりと思い出した。彼は惜しいなと思って再び罪を犯すそうである。私は惜しいなと思って素晴らしい感覚の夢から覚めたが、それが実際惜しかった。

万引をするような人は、また、再三竊盗の罪を犯すような人は、吾々の知らない素敵な感覚を経験するに違いない。

そんなことを考えて私は、A老人に逢った時、彼と一緒に万引して歩いた夢の話をした。

その時、A老人は微醺を帯びていた。※(「臣+頁」、第4水準2-92-25)の粗髯をしごきながら、黙って私の話をきいていたが、しまいにこう云った。

「物欲に囚われすぎた話だな。」

「だって、あなたと一緒だから面白いじゃありませんか。