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ゆうれいとスクリュウ
幽霊と推進機
夢野 久作
Read 幽霊と推進機 (ゆうれいとスクリュウ) by 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 11,905 characters · 24 screens
そうして、とうとう二つの袋が波の間に沈んで見えなくなると皆、ホッとして顔を見合わせた。
云い知れぬ恐怖が船全体に満ち満ちた。
眼のまわる程忙がしいのをソッチ除けにして、あらん限りの火薬を集めて、あらん限りの爆竹が作られた。船員の中で出られる限りの者は皆、船首に集まって手に手に爆竹を鳴らしながら二人の霊を慰めた。
潮飛沫に濡れたのはそのまま海に投込んだ。空砲も打った。短銃も放った。
その音は轟々と吹く風に吹き散らされ、々と崩れる波に入り乱れて物凄い限りを極めた。
けれども、結局この船に付いた怪痴を払い除ける事は出来なかったらしい。
出帆してから一週間目に来た、その大時化の最高潮に、メイン・マストも、舵も、ボートも、皆遣られた丸坊主のピニエス・ペンドル号は、毅然としている船長と、瀕死の水夫長と、狼狽している船員を載せたまま、グングンと吹き流され始めた。そうして一日一夜の後に、どこともわからない海岸に吹き付けられて難破してしまった。
私は水夫長の救命胴着を身に着けて、真暗な舷側から身を躍らせた。
それから暫くの間暗黒の海上を、陸地らしい方向へ一生懸命に泳いでいるつもりであったが、やがて、腕に火が付いたような感じがしたのでビックリして眼を開いてみると、意外にも私は、一等船室らしい見事なベッドの中に、リンネルの寝間着