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あくいんねんのうらみ
悪因縁の怨
江見 水蔭
Read 悪因縁の怨 (あくいんねんのうらみ) by 江見 水蔭 (えみすいいん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 13,705 characters · 28 screens
「それなんだ。そこがどうにも行悩みだが、御隠居奥様も大層物のお分りになった方だし、御親類内にも捌けた方が多いので、そんな訳なら、とにかく、屋敷へ呼寄せたい。母親の生活は又どうにでもしてやると、親元には相当の人を立て、そこから改めて嫁入り……と、まア、そこまで行かない分が、二千八百石御旗本の御側女になら、今日が今日にでも成られるので、支度料の二百両、重いけれど愚庵は、これ、ここに入れて来ているのだがね」
「それはどうも有難う御座います」
「待ってくれ、礼には早い」
「左様ですか」
「若い同士二人でモヤモヤしている間は、顔が美しくッて、気立が優しくッて、他に浮気もせず、殿を大事にさえしておれば、好いに相違無いが、いずれは二人の間に、子宝が出来ると考えなければならない」
「それはそうで御座いますよ。あの娘は、六人や七人は大丈夫産みますね」
「その時にだ、能くある奴、元の身分を洗って見ると、一件だッてね」
「一件?」
「一件で無いにしたところで、癩病の筋なんか全く困る」
「それはそうで御座いますねえ」
「どうも世継の若様が眉毛が無くッては、二千八百石は譲られない」
家の相続、系統上の心配は、現代の我々が想像出来ない程昔は苦労にしたもので、断家という事は非常に恐れていた時代だから、血統に注意するのは無理では無かった。