Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

にちにちへいあん

日日平安

山本 周五郎

Read 日日平安 (にちにちへいあん) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 28,297 characters · 56 screens

Aozora Bunko

北面に正門。西に馬入れの門。三方に築地塀を廻らし、南側の濠に沿った一方だけ黒く塗った柵になっていた。柵の内側は杉の深い林で、その杉林が邸内の半ばを占めている。築地塀の外からもそれらの梢が高く、くろぐろと夜空をぬいているのが見えた。十郎太は濠に接した築地塀の端までゆき、そこから柵のほうをのぞいた。濠は両岸を石で組んだ幅二間ばかりのもので、かなり豊かな水が音を立てて流れている。風のない暖かい夜で、さあさあというその水音が、杉林にひっそりと反響していた。

「ここから入るんだが」と十郎太が柵の一部を指さした、「――貴方も入ったほうがいいでしょう、人が通ってみつかるとうるさいから」

菅田平野は頷いた。

柵の一本が動くようになっている。たぶん粛清派の仲間がひそかに出入りしたのであろう、菅田平野はそんなふうに想像しながら、十郎太のやりかたをまねて、柵の中へ入った。

「ここで待っていて下さい、いちおうようすを見て来ます」

十郎太はそうささやいて、杉林の中の踏みつけ径を向うへ去った。菅田平野は待っていた。あたりはまっ暗で、湿った空気は重たく杉の匂いがした。

「おれはさないぞ」