Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
こんちゅうず
昆虫図
久生 十蘭
Read 昆虫図 (こんちゅうず) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 1,772 characters · 4 screens
伴団六は、青木と同じく、大して才能のなさそうな貧乏画かきで、地続きの古ぼけたアトリエに、年増くさい女と二人で住んでいた。
青木がその裏へ越して以来の、極く最近のつきあいで、もと薬剤師だったというほか、くわしいことは一切知らなかった。
職人か寄席芸人かといったように髪を角刈にし、額を叩いたり眼を剥いて見せたり、ひとを小馬鹿にした、どうにも手に負えないようなところがあって、これが、最初、青木の興味をひいたのである。
細君のほうは、ひどく面長な、明治時代の女官のような時代おくれな顔をした、日蔭の花のような陰気くさい女で、蒼ざめたこめかみに紅梅色の頭痛膏を貼り、しょっちゅう額をおさえてうつ向いていた。吉原にいたことがあるという噂だった。
どういういきさつがあるのか、思い切って素っ気ない夫婦で、ときどき、夜半ごろになって、すさまじい団六の怒号がきこえてくるようなこともあったが、青木の前では、互いに猫撫で声でものを言い合っていた。
十一月のはじめ、青木は東北の旅から帰り、その足で団六のアトリエへ訪ねて行くと、団六はめずらしくせっせと仕事をしていた。
日本間のほうを見ると、いつもそこの机にうしろ向きになって、牡蠣のようにへばりついている細君の姿が見えないので、どうしたのかとたずねると、病気で郷里へ帰っているのだといっ