Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はるのやま
春の山
久生 十蘭
Read 春の山 (はるのやま) by 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 8,782 characters · 18 screens
明月院の相手は、羽着きの薄い枯笹色の貧相な鶏で、いくどかの戦いで背中のあたりまで羽毛をむしられ、ぞっとするような赤肌をむきだしているのは悲惨だが、鶏冠を半分以上も剃り落してあるので、頭だけ見ると、鸚鵡のお化けのようで滑稽だった。明月院は凛然たる剣豪の風格だが、佐介のほうは鶏の隠居といった態で背中を丸め、このまま眠りたいとでもいうように眼をショボショボさせている。戦うなどというスタイルではない。ショオにでもなりそうな間のぬけた組合せなので、観衆はクスクスと忍び笑いをしていたが、なにかのきっかけで、いちどにどっと笑いだした。
この試合は賭のない娯楽の一番らしく、誰も試合の成行などは問題にしていない。明月院のようなマレモノをつくりだした六さんにたいする祝儀の一番なので、佐介は絶対に負けるためにリンクにひきだされた生餌にすぎない。花試合というのは、本来、こんなものなのだろうが、もしそうだとすれば、残酷だという意味ではちょっと類のない試みであった。
周平が伸びあがって見ると、明月院と佐介が一体になって揉みあっていた。蹴る、ひっかける、おし倒す、乗りつぶす。