Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
つきとてぶくろ
月と手袋
江戸川 乱歩
Read 月と手袋 (つきとてぶくろ) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 39,541 characters · 80 screens
うちにいれば、昼も夜も、門のそとに黒い外套の男が立っていた。
「奥さま、へんなやつが、勝手口のそとに、ウロウロしてますよ。いま買いものから帰ったら、そいつがあたしの顔を見てニヤッと笑いました。泥棒じゃないでしょうか」
きよが、息せききって報告した。ああ、そちらにもか。泥棒でないことはわかっていた。
「黒い外套に、鼠色のソフトをかぶった男?」
「いいえ、茶色のオーバーに鳥打帽です。人相のわるいやつです」
(すると、見張りがふたりになったんだな)
あけみはいそいで二階にあがって、カーテンのすきまから、表通りを見た。ここにもいる。どぶ川のふちの電柱にもたれて、横目で二階をジロジロ見ている。いつもの黒いオーバーのやつだ。
そして、その夜は、おもて裏の見張りが三人になった。克彦は書斎のアームチェアを窓際によせて、それにかけたまま、カーテンの隙間から覗いていた。暗くてハッキリは見えぬけれど、ひとりは電柱の蔭、ひとりは散歩でもしているていで、うしろ手を組んで、ノソリノソリと、向うの町角まで歩いては、また戻り、また戻りしていた。
(根気のいいことだ。こちらも根気よくやらなければ。