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うたあんどん
歌行灯
泉 鏡花
Read 歌行灯 (うたあんどん) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 36,094 characters · 72 screens
……舞も、あの、さす手も、ひく手も、ただ背後から背中を抱いて下さいますと、私の身体が、舞いました。それだけより存じません。
もっとも、私が、あの、鳥羽の海へ投入れられた、その身の上も話しました。その方は不思議な事で、私とは敵のような中だ事も、いろいろ入組んではおりますけれど、鼓ヶ嶽の裾の話は、誰にも言うな、と口留めをされました。何んにも話がなりません。
五日目に、もう可いから、これを舞って座敷をせい。芸なし、とは言うまい、ッて、お記念なり、しるしなりに、この舞扇を下さいました。」
と袖で胸へしっかと抱いて、ぶるぶると肩を震わした、後毛がはらりとなる。
捻平溜息をして頷き、
「いや、よく分った。教え方も、習い方も、話されずとよく分った。時に、山田に居て、どうじゃな、その舞だけでは勤まらなんだか。」
「はい、はじめて謡いました時は、皆が、わっと笑うやら、中には恐い怖いと云う人もござんす。なぜ言うと、五日ばかり、あの私がな、天狗様に誘い出された、と風説したのでござんすから。」
「は、いかにも師匠が魔でなくては、その立方は習われぬわ。むむ、で、何かの、伊勢にも謡うたうものの、五人七人はあろうと思うが、その連中には見せなんだか。