Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しまでをかたる

死までを語る

直木 三十五

Read 死までを語る (しまでをかたる) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 42,739 characters · 85 screens

Aozora Bunko

ここへ、一日、須磨子が現れた。井上市次郎というその甥さん――だが六つ齢下の甥さんは

「何んや、喧嘩したんか」

と、大きい眼を、もっと、大きくして聞いた。

「はあ、もう、大阪へ帰れへんつもり」

須磨子は、兄の玄竜という人と、余り仲がよくなかった。大学生位までは、美人の妹というものをもっていると、いろいろ利益や、興味が、多いものであるが、生活などが、うまく行かないのに、二十七にもなる妹をもっていると、何んなにそれが、美しくとも、古い女房の、美しさと同じで、少しも、よくは感じないものである。

「植村は」

「田端にいよる」

私は、田端の、小杉未醒氏の所の近く、泥川沿いの戸叶という家の離れに、藤堂と二人で自炊していた。

藤堂は太平洋画会へ通っていたし、私は早大文科の予科にいたのである。室生犀星氏が、この藤堂と友人で、びっこの詩人と二人、よく、室生氏を訪問に行っていたらしい。

この戸叶方へ、須磨子が来て、当分、東京に居るつもりとか、少しはお金がある、とか(これは、二十円の債券を何枚かもっていたのである。勿論、後には、生活費になった)。だが、近頃の時代とちがって、婦人の職業と云えば交換手か、看護婦しかない頃であるから