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あぶらじごく
油地獄
斎藤 緑雨
Read 油地獄 (あぶらじごく) by 斎藤 緑雨 (さいとうりょくう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 34,624 characters · 69 screens
三
の姿で居たといえば、水車の裾模様を二枚重さねて、帯は吾妻錦、襦袢は緋の紋壁にしおぜの白半襟、芸子髷に金の竹輪を掛け、花笄に平打の銀簪、櫛は白鼈甲の利休形、ひんの好い一方のつくりで、今燭の映ったは萌黄に金の竜眼の紐鎖、どう見てもこの会が約束の品ではなく、会員中の外飾好が特に召連て来たものと思われた。
三
縁が不思議のものなら、ほれるは一層不思議だ。今の小説家は、ほれたりほれられたりのために、鼻筋が通って口元が締って、眼におびただしい愛嬌を有するという器用な女をつくり上げるが、ほれるは必ず美にほれるのではない、ほれられたその者がすなわち美になるのだ。世間では、ちょいと見てちょいと惚れると云ておかしがるけれども、つまりちょいと惚れるのが後によくほれるので、その初めはちょいとゝ云うよりほかに指す所がない。万一あの眼元にほれたとか口元にほれたとか、乃至鼻筋にほれたとかゞ最初から知れて居れば、そのほれたのは偽わりだ、何故となれば、生れて欠点の全く無い者はないはずだから、ほれるほどの不思議が起る時に、どこが好と明らかに指すことが出来れば、どこが醜いということもまた明らかに指す