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ゆなのたましい
湯女の魂
泉 鏡花
Read 湯女の魂 (ゆなのたましい) by 泉 鏡花 (いずみきょうか) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 27,936 characters · 55 screens
小宮山はまた悚然とした。
「ええ、お雪さんが、どんな様子で。」
「実は今夜本を見て起きていると、たった今だ、しきりにお頼み申しますと言う女の声、誰に用があって来たのか知らぬが、この雨の中をさぞ困るだろうと、僕が下りて行って開けてやったが、見るとお雪じゃないか。小宮山さんと一所だと言う、体は雨に濡れてびっしょり絞るよう、話は後からと早速ここへ連れて来たが、あの姿で坐っていた、畳もまだ湿っているだろうよ。」
と篠田はうろうろしてばたばた畳の上を撫でてみまする。この様子に小宮山は、しばらく腕組をして、黙って考えていましたが、開き直ったという形で、
「篠田、色々話はあるが、何も彼も明日出直して来よう、それまでまあ君心を鎮めて待ってくれ。それじゃ託り物を渡したぜ。」
「ええ。」
「いえ、託り物は渡したんだぜ。」
「託り物って何だ。」
「今受取ったそれさ。」
「何を、」と篠田は目も据らないで慌てております。
「まあ、受取ったと言ってくれ。ともかくも言ってくれ、後で解る事だから頼む、後生だから。」
魂の請状を取ろうとするのでありますから、その掛引は難かしい、無暗と強いられて篠田は夢現とも弁えず、それじゃそうよ、請取ったと、挨拶があるや否や、小宮山は篠田の許を辞して、一生懸命に駈出した、さあ荷物は渡した、東京へ着いたわ、雨も小止みかこいつ