Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

おぼるるもの

溺るるもの

豊島 与志雄

Read 溺るるもの (おぼるるもの) by 豊島 与志雄 (とよしまよしお) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 17,690 characters · 36 screens

Aozora Bunko

平素は温厚な男だが……。」

「どういう人ですか。」

「大変な学者だ。こんど紹介してやろう。図書館に勤めてるが、古今東西の学問に通じてる。片岡……片岡正夫というんだ。」

ほう……と俺は思った。

その雀の巣の片岡正夫だった。それが夜の大川端を女を連れて歩いてる……。

俺は二人をやり過して、その後を見送った。

女は季節後れの厚ぽったい長いコートを着て、薄いフェルトの草履で、ぽったりぽったり歩いていた。髪を天神髷に結っていた。その襟足がばかに真白だったが、先刻ちらと見たところでは、顔は濃い白粉を脂で拭きとったらしくつるりとしていた。それと並んでがっしりした高い男の姿が、妙に不似合だった。駒下駄を一足一足ふみしめてる歩きっぷりが、身体から酔がさめて頭にまだ酔が残ってる中途半端なものだった。

夜、新らしい広い道、大川端、水にうつってる向う岸の明るい灯、銘酒屋のらしい女、雀の巣の片岡さん……その全体がどうもしっくりいかないで、俺の注意を惹いた。

俺は遠くから、電燈の柱の影にかくれて、なお二人の様子を窺った。

二人は何か時々短い言葉を交しながら、肩を並べて、ごくゆっくり歩いていた。