Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
たきぐち
滝口
山本 周五郎
Read 滝口 (たきぐち) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 49,815 characters · 99 screens
一つに合流し、そしてまた二つに分れる」
「豊水期にもこれらの洲は冠水することなく」と畠中が暗誦するように続けた、「またその数の増減する例もなし、これ珂知川のふしぎの一とす、――平州地誌に書いてあるさ」
「釣れても釣れなくっても」と益村は問いに答えた、「こんなことはかくべつ面白いものじゃないさ」
畠中は黙っていたが、やがて水面を指さし、引いているぞと云った。けれども益村には聞えたようすがないので、もういちど「引いているよ」と注意した。
「魚じゃないさ」と益村は答えた。
「浮子を見ろよ」
「鉤がなにかにひっかかったんだろう」益村はそう云った、「心配するな、餌のない鉤に魚はくいつきゃあしないから」
畠中は眼をみはって益村の顔を見、すぐにその眼を細めた。むっとしたのだろう、なにか云い返そうとして、二三度その唇をむずむずさせたが、思い直したようすで、逆に皮肉な微笑をうかべた。
「なにか困ったことでもあるんだな」
「あの木を知っているか」と云って益村は対岸のほうへ顎をしゃくった、「あそこに大きな濃い緑の木があるだろう、葉の表はひどく濃い緑だが、裏は白いんだ、そら、――風が吹きあげて葉裏が返ると、ぜんぶの枝に白い花が咲いたようにみえるだろう」