Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

たきぐち

滝口

山本 周五郎

Read 滝口 (たきぐち) by 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 49,815 characters · 99 screens

Aozora Bunko

十二

「そしておりうは私から逃げはじめました、稲毛の店を出てからここへ来るまで、同じ店に半年といたことはありません。どこをどう逃げて来たかは云う必要がないでしょう、ただ、これだけは知っておいて下さい、おりうは逃げだすたびに、ちゃんと足跡を残していったものです」

安宅は眼をあげて相手を見た。自分の考えにとらわれていた彼の耳が、いつも足跡を残していったという芳村の言葉を聞きとめ、注意力をよびさましたのだ。

「そのとおりなんです」と芳村は安宅の眼に頷き返した、「いつも必ずそうしたんです」

十二

甲の店から乙の店へ移るとき、おりうは甲の店の者に「ないしょだ」と断わって乙の店のことを告げてゆく。乙から丙、丙から丁へと、店を変えるたびに必ず、「これは誰にも云わないでね」と云って、次にゆく店のことを告げたというのだ。

「仲のいい朋輩があって、その者に告げてゆくというわけではなかった、おりうはどこの店でも独りで、親しく語りあうような朋輩は一人もないし、どこの店でも女中なかまには嫌われていたようです、嫌われる理由の一つは、どこへいってもおりうは客のにんきをさらい、客たちは必ずおりうの奪いあいを始めるからです」